チロルチョコ炎上事件に思う-炎上させて楽しい?
今年の6月に「チロルチョコに虫が混入していた」というツイートが投稿されたことに因る“炎上事件”に関して、当時色々と書きたいことがあったのですが、多忙のためTwitterで少々コメントしただけでした。しかし、最近のCNET Japanに掲載された「賞賛と炎上を分けるもの」という記事を読んだことをきっかけに、書きたい思いが再燃したのでこれから書きます。時期外れの話題を含みますが、ネットマナーに関する普遍的なテーマだと思います。
この“事件”の流れをおさらいしておきましょう。
2013年6月11日12時57分、以下のツイートが画像付きで投稿され、ネット上で話題になる。
↓
同日16時頃、チロルチョコ公式Twitterの見解がツイートされる。
↓
同日19時頃(推定)、発端となったツイートを投稿した人(以下、「彼女」と呼びます)はアカウントに鍵をかけ、最終的にはアカウント削除。
「賞賛と炎上を分けるもの」にも書かれている通り、チロルチョコ側の対応は実に的確で、賞賛に値することは言うまでもありません。この対応によって、虫が製造過程で混入したことはあり得ず、流通過程または購入後の長期保存中に(真相は恐らく後者)入り込んだことが明白になりました。
一方、彼女がアカウントを消したことが私は非常に気になります。アカウントを削除するに値するとはどうしても思えないのです。
理由1:画像およびチロルチョコ側がリンクしたpage等から判断する限り、故意や悪意で虫を混入させたり嘘をついたりしているとは考えにくい。
理由2:彼女の文章は「チョコに虫が入っていた」という事実と「もう絶対食べない」という個人的な決意を書いているだけであり、製造元を責めるような記述は一切見当たらない。(※彼女へのリプライの中にはチロルチョコ社を悪いと決め付けるものはありましたが……)
ところが、当時の2chなどのネット上では彼女を批判する論調が中心的になっていきます。この辺りについては、2chまとめサイトではありますが、次のpageを参考にしました。
バカッター民 「チロルチョコに芋虫が入ってたよー」→チロルチョコに完全論破され逃亡wwwwww
スレタイにもあるようなバカ呼ばわりや嘘つき呼ばわりをはじめとして、中には「名誉毀損」や「威力業務妨害」などの罪名を挙げて彼女を叩くレスまであります。当該ツイートがこれらの犯罪に相当するとは思えません(上の理由1と2より)。このような過度な批判が掲示板の書き込みだけではなくTwitterのリプライ等によって直接本人にも向けられていたことは、次の引用から明らかでしょう。
もちろん、発端となったツイートが全く無問題とは言えません。読む人によっては製造元に責任があると誤解するおそれがあるからです。Twitterの性質上、投稿を放置すればリツイートで拡散する可能性があります。ですから当該ツイートを削除した上で、チロルチョコ側の説明を引用するなどして弁明すれば済んだ話です。つまり、彼女に批判リプを飛ばすなら「チロルチョコがこう言ってるからツイートを削除して謝ったらどうか」のような内容が最も相応しかったはずです。これなら、彼女がTwitterやネットで嫌な思いをすることも誤りが拡散することもなく、より望ましい結末に到ったのではないでしょうか。
ここからは一般論です。ブログやTwitterが多数のネット民の批判に晒されて炎上する事案は時々見かけますが、その中には炎上に値しないと感じられるケースが結構あります。逆に炎上しても仕方ないかな、と私が思うのは次のA.~C.の場合だけです。
A. 違法行為または違法行為予告が書かれている
B. 違法とは言えないものの公的な立場に鑑みて相応しくない内容を含む(政治家の失言系はこれに当たるでしょう)
C. 意図的に虚偽の事項が書かれている
チロルチョコの件はいずれにも該当しないと思われます(そう考える理由は既に書きました)。
日本のインターネットには、過度な批判を集中させてブログやTwitterを潰そうとする人々が一定数存在します。匿名ブログの場合はコメント欄を閉じてしまえば非難を一切目にしなくて済むかも知れませんが、Twitterの場合はシステム上そうはいかないので事態はより深刻になり得ます。彼らは何故炎上させようとするのでしょうか? チロルチョコの件に関しては不適切もしくは歪んだ正義感(違法でないのに違法性を指摘する等)がかなりの要因を占めるように思われます。また「バカ」のような一行コメントで人を非難することは、もはや批判と呼ぶにも値しない行為です。他人をバカと呼ぶなら、何故そう考えるのかを筋道立てて説明しなければならないと思っています。
他人を適切に批判できない者は批判するな、と言いたいところですが、批判するのも言論の自由の範疇なのでそうもいきません。歪んだ正義感や根拠なき罵倒さえ無くなればネットはもっと素晴らしい場になるのに、と私は常々夢想しているのです。リアルなメディアで滅多に読めないような大胆な主張や個性的な意見などが読めることが、ブログやTwitterをはじめとするWebの大きな美点だと思っています。むやみに炎上させる行為はこの美点を潰すことに繋がりかねないので、到底支持できません。
【関連過去エントリ(旧ブログ)】
『「炎上」の力学』を評する
「ブログ炎上マニア」を嫌悪する
この“事件”の流れをおさらいしておきましょう。
2013年6月11日12時57分、以下のツイートが画像付きで投稿され、ネット上で話題になる。
@ntm_bo
チロルチョコの中に芋虫いた。どーゆーこと?ありえない。もう絶対食べない。これ見ないで食べてたら、わたし芋虫食べてたってこと?怖すぎる、、(画像)
↓
同日16時頃、チロルチョコ公式Twitterの見解がツイートされる。
現在Twitter上でチロルチョコの中に芋虫がいたというツイートが流れている件に関しまして説明させて頂きます。現在ツイートされている商品は昨年の12月25日に最終出荷した商品で掲載されている写真から判断しますと30日~40日以内の状態の幼虫と思われます。
— チロルチョコ株式会社 (@TIROL_jp) June 11, 2013
詳しくはこちらのサイトをご覧下さい。http://t.co/0iYINOLeVm お騒がせしており申し訳御座いません。
— チロルチョコ株式会社 (@TIROL_jp) June 11, 2013
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同日19時頃(推定)、発端となったツイートを投稿した人(以下、「彼女」と呼びます)はアカウントに鍵をかけ、最終的にはアカウント削除。
「賞賛と炎上を分けるもの」にも書かれている通り、チロルチョコ側の対応は実に的確で、賞賛に値することは言うまでもありません。この対応によって、虫が製造過程で混入したことはあり得ず、流通過程または購入後の長期保存中に(真相は恐らく後者)入り込んだことが明白になりました。
一方、彼女がアカウントを消したことが私は非常に気になります。アカウントを削除するに値するとはどうしても思えないのです。
理由1:画像およびチロルチョコ側がリンクしたpage等から判断する限り、故意や悪意で虫を混入させたり嘘をついたりしているとは考えにくい。
理由2:彼女の文章は「チョコに虫が入っていた」という事実と「もう絶対食べない」という個人的な決意を書いているだけであり、製造元を責めるような記述は一切見当たらない。(※彼女へのリプライの中にはチロルチョコ社を悪いと決め付けるものはありましたが……)
ところが、当時の2chなどのネット上では彼女を批判する論調が中心的になっていきます。この辺りについては、2chまとめサイトではありますが、次のpageを参考にしました。
バカッター民 「チロルチョコに芋虫が入ってたよー」→チロルチョコに完全論破され逃亡wwwwww
スレタイにもあるようなバカ呼ばわりや嘘つき呼ばわりをはじめとして、中には「名誉毀損」や「威力業務妨害」などの罪名を挙げて彼女を叩くレスまであります。当該ツイートがこれらの犯罪に相当するとは思えません(上の理由1と2より)。このような過度な批判が掲示板の書き込みだけではなくTwitterのリプライ等によって直接本人にも向けられていたことは、次の引用から明らかでしょう。
@ntm_bo
もー鍵つけた!!あのツイートも消す!!やだー(T_T)嘘とか、言われまくるし、リプの批判とかちょー怖い(T_T)このアカウントもうだめ!削除するつもり!!
もちろん、発端となったツイートが全く無問題とは言えません。読む人によっては製造元に責任があると誤解するおそれがあるからです。Twitterの性質上、投稿を放置すればリツイートで拡散する可能性があります。ですから当該ツイートを削除した上で、チロルチョコ側の説明を引用するなどして弁明すれば済んだ話です。つまり、彼女に批判リプを飛ばすなら「チロルチョコがこう言ってるからツイートを削除して謝ったらどうか」のような内容が最も相応しかったはずです。これなら、彼女がTwitterやネットで嫌な思いをすることも誤りが拡散することもなく、より望ましい結末に到ったのではないでしょうか。
ここからは一般論です。ブログやTwitterが多数のネット民の批判に晒されて炎上する事案は時々見かけますが、その中には炎上に値しないと感じられるケースが結構あります。逆に炎上しても仕方ないかな、と私が思うのは次のA.~C.の場合だけです。
A. 違法行為または違法行為予告が書かれている
B. 違法とは言えないものの公的な立場に鑑みて相応しくない内容を含む(政治家の失言系はこれに当たるでしょう)
C. 意図的に虚偽の事項が書かれている
チロルチョコの件はいずれにも該当しないと思われます(そう考える理由は既に書きました)。
日本のインターネットには、過度な批判を集中させてブログやTwitterを潰そうとする人々が一定数存在します。匿名ブログの場合はコメント欄を閉じてしまえば非難を一切目にしなくて済むかも知れませんが、Twitterの場合はシステム上そうはいかないので事態はより深刻になり得ます。彼らは何故炎上させようとするのでしょうか? チロルチョコの件に関しては不適切もしくは歪んだ正義感(違法でないのに違法性を指摘する等)がかなりの要因を占めるように思われます。また「バカ」のような一行コメントで人を非難することは、もはや批判と呼ぶにも値しない行為です。他人をバカと呼ぶなら、何故そう考えるのかを筋道立てて説明しなければならないと思っています。
他人を適切に批判できない者は批判するな、と言いたいところですが、批判するのも言論の自由の範疇なのでそうもいきません。歪んだ正義感や根拠なき罵倒さえ無くなればネットはもっと素晴らしい場になるのに、と私は常々夢想しているのです。リアルなメディアで滅多に読めないような大胆な主張や個性的な意見などが読めることが、ブログやTwitterをはじめとするWebの大きな美点だと思っています。むやみに炎上させる行為はこの美点を潰すことに繋がりかねないので、到底支持できません。
【関連過去エントリ(旧ブログ)】
『「炎上」の力学』を評する
「ブログ炎上マニア」を嫌悪する