席を譲られない方が楽な場合

学生の頃のちょっとした思い出話から。

ある日、大学へ向かう混雑した電車内で、女子学生(たぶん私と同じ大学の体育会所属)が白杖持ちの視覚障害者の人に席を譲っているのを見かけました。障害者の人は一旦は譲られるのを断っていましたが、女子学生はそれでも更に座るように促し、最終的には丁寧に手を引いて座席に誘導していました。当時の私はそれを見て、譲った人は偉いなと思う一方、譲られた人は本当に譲って欲しかったのかな? という疑問を抱きました。目が不自由ということは、もしかしたら普段から電車内で立つ場所を決めているため、席に座ってしまうとドアまでの方向感覚や距離感が失われる可能性があると思ったのです。とは言え、推測だけで断言はできません。そのときの私は当然口を挟むことなどなく、若干後ろ髪を引かれる思いで目的の駅で降りたわけです。

それから約20年経った最近、後述するある理由により上記の出来事を思い出しました。当時とは違い、今はネットで色々調べられる時代。「電車 目が不自由 立っている」で検索してみました。残念ながら視覚障害者自身の意見はなかなかヒットしませんが(探し方が悪いのかも知れません)、参考になりそうなQ&Aはいくつか見つかります。たとえば、
目の不自由な人に席を替われない私(発言小町)
目の不自由な方に電車で席をゆずることにどう考えますか? 別に手足が不自由な訳...(Yahoo知恵袋)
いくつかの回答を見る限り、やはり「席を譲ってもらわない方が楽な視覚障害者」が存在することは確かなようです。とは言え、障害の種類や程度にも色々あるので、逆に譲られる方が嬉しい方もきっと存在するはずです。よって、電車内での目の不自由な方に対する最も望ましい最初の対応は、席に座らない方を望む障害者が存在し得ることを念頭に置きつつ、「席が空きますがお座りになりますか?」のように声を掛けることではないかと思われます。その際、譲られる側の望ましい対応としては、座る方が楽な場合は遠慮せずに好意に甘える方が余計な誤解やストレスを回避できるでしょう。もし譲られることを選んだなら、譲る側が座席の背もたれに相手の手を触れさせるなどの誘導を行えば良いでしょう。

さて、私が本当に主張したいことはこの後に書きます(長い前置きだ)。

最近、私自身がバスや電車内で「席を譲られない方が楽な場合」を実体験をしています。譲られるのが恥ずかしいなどの精神的な要因ではなく、座らない方が物理的・肉体的に楽な場合が存在するのです。ちなみに私は視覚障害者ではありません。さて、それはどういう場合でしょうか? 

答えは「乳幼児を抱っこしているとき」です。念のため付け加えるとこれには個人差があるはずで、あくまで私自身の実感を書いているに過ぎません。

ブログ等に私生活を記すのは好きではありませんが、テーマの性質上少しだけ書くと、私には小さな子供がいます。子育て経験者なら分かると思いますが、乳児の場合、立って抱っこしていると泣き止むのに座ると泣き始める状態に陥ることが結構あります(乳児には高さセンサーが装備されているのではないかと疑うほどです)。そのような状態のときに席を譲ることを提案されても困惑してしまいます。私の子供は今はもう乳児ではなく幼児ですが、それでも問題が生じることはあります。いわゆるイヤイヤ期(第1次反抗期)の幼児は、ちょっとした状況の変化を嫌って騒ぎ出す可能性があります。さらに私の子供の場合、席が2人分空いていれば余り問題ありませんが1人だけで座ったり膝の上に座ったりするのを嫌がる傾向があります(まあ、これは特殊事情でしょうが)。幸い私自身の足腰には故障がありません。ゆえに、混雑したバスや電車内では、抱っこしたまま立っている方が騒がれたり泣かれたりするリスクを確実に回避できるので、(余程乗車時間が長い場合を除けば)席に座らない方を選びます。繰り返しになりますが、以上はあくまでも私の場合です。

しかし、子供を抱っこしていると結構な高確率で席を譲られます。その都度「すぐ降りますので」のようなことを言って断ります。ところが相手は私が遠慮していると思っているのでしょう。大抵の場合は座ることをもう一度促してきます。ここでどうすればうまく断れるのでしょうか? 以前に、「座らない方が楽ですから」とやや強めの口調で正直に言ってしまい怪訝あるいは不機嫌な顔をされてしまったことがあります。これは失敗でした。多くの人にとって「座らない方が楽」というのは多分想像がつきにくいでしょうから、本当に納得してもらうためには前段落の内容を説明するしかありませんが、現実的とは言えません。理由を言わずに「結構です」で済ませるのが無難なのでしょうか。

そろそろまとめに入ります。以上の事情があるので、乳幼児を抱っこしている私を見かけても席を譲らないでください……と書きたいところですが、顔写真を公開していないので無駄ですね。

一般的には、やはり乳幼児(3歳くらいまでかな)連れには席を譲る方が望ましいと思われます。ネットで検索しても「譲ってほしい」的な意見は結構見かけます。そして、最後に理想を言わせてもらうならば、譲られた側は、座る方が楽なら遠慮せず好意に甘えるべきだと思います。一方、誰かに席を譲る際は、席に座らない方が楽という状況があり得ることを念頭に置き、断られたら黙って引き下がる姿勢の方が不快感やトラブルを回避できると思うのです。

最後の最後に念のための追記です。席を譲る行為は規則で定められたものではなく、あくまでもマナーに過ぎません。マナーの捉え方は人それぞれです。当エントリの私の主張は、あくまでも私個人の感覚を述べたものに過ぎません。ですから、誰かに席を譲ることなどを読者に推奨したりする意図は全く無いことを付け加えておきます。

テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

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