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体罰論および違法性に関するまとめ

現在、大阪の市立高校で起きた体罰が原因とみられる自殺事件が世間を騒がせています。

そもそも、学校教育の場での体罰は明確な違法行為。ですから、「体罰は必要」や「体罰は仕方ない」という類の言論は、私の感覚では未成年者喫煙の容認と同レベルの主張です。

法律論を一旦措きます。仮に一部の児童生徒に体罰が有効だったとしても、暴力を容認する空気や今回の事件のような悲劇を生み出すリスクを考えると、やはり体罰には全く賛成できません。

体罰無しでコントロールできないような教育困難校や指導困難生徒が存在するではないか、という反論も考えられます。気持ちはよく分かります。力量ある教師が体罰抜きで指導できれば理想ですが、そうはいかない場合もあるでしょう。この場合、非体罰かつゼロトレランス的な厳罰(出席停止や場合によっては強制留年等)を導入するのが良いと個人的には思っていますが、そのためには日本社会全体の大きな意識変革を要するので難しそうではあります。

なお、今回の大阪市立高校の事件は、報道によると「部活を強くするための主将に対する体罰」だったようで、どう考えても体罰を必要とする状況とは私には思えません。

さて、以下の追記において、日本の学校教育で体罰が違法である根拠と、現行での体罰の基準についてまとめておきます。
 
 
国内法で直接体罰を禁じる条文は学校教育法の第11条です。
第十一条  校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

なお、この法律に処罰規定はありません。現実には教育委員会等による懲戒処分が課せられることになるでしょう。尤も、度が過ぎた暴力や負傷があった場合は、刑法の暴行罪や傷害罪に該当し、刑事罰の対象となる可能性が生じてきます。

また、国内法ではありませんが「児童の権利に関する条約」(日本では1994年発効)にも体罰を禁ずると解釈できる規定があります。
第19条
1 締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。

では、体罰と非体罰の境界はどこにあるのか。若干微妙ではありますが、これについては2007年の文部科学省通知に記述があります。要約すると以下のようになるでしょう。
  • 殴る蹴る等の身体的懲戒や、長時間立たせる等の肉体的苦痛を伴う懲戒は、学校教育法で禁じられている「体罰」に該当するので、違法。
  • 居残り指導や、長時間ではない起立指導は、体罰に該当しないので適法。
  • 授業を妨害する生徒を教室から追い出して別室で指導することや、悪質ないじめ加害者の出席停止は、アフターフォローを条件として、適法。

テーマ : 社会問題
ジャンル : ニュース

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